ジンクフィンガー その6 作:まりえしーる 発表日: 2005/12/06 10:00

「指輪を返してもらいたい」

リンコは社長室に連行され、スエヨシと対峙している。

「あ、あのキャベツ指輪。あんたらアレが欲しくてあたしをさらったんだ」「早く出せ」「あたしは持ってない。今頃トモダチがケーサツに届けてるんじゃないかな。捜査一課か麻薬課か機動隊あたりに」「なんだと。止めさせろ」「なんでよ」「家に帰りたくないってゆうんだな、お嬢さん」

リンコはしぶしぶケータイを取り出した。ぴっ。「あ、カイエ、あたし。今トラブルに巻き込まれてるんだ」



カイエのケータイがスーパーに向かう途中で鳴った。リンコからだ。「何よ、トラブルって。え。これからスーパー届けるとこだけど。なにそれ。無事なの」



スエヨシはリンコからケータイを奪い取った。「もしもし。トモダチを無事に返してほしければ指輪を持って北町のコアダンプホテル地下駐車場に、えーと、今何時だ、1時に来い。昼だ、昼の1時だよ。13時だ。トモダチは指輪と交換だ。いいか、ケーサツに言ったらトモダチの命はないもんと思え」。ぴっ。



カイエはしばらくケータイを見つめる。どうなってるんだ。わからないけど、リンコが暴力的な男と一緒にいてキケンな状況にあるってことは間違い無さそうだ。どーしたもんかな、この指輪。ケーサツに言うな、ってメッセージは、ケーサツに言えって意味だろうか。そしてケーサツに相談すると、ご安心くださいなんて言いながら刑事がやって来て、成功した話を聞いたことが無い逆探知の機材があたしのアパートに運び込まれ、犯人の連絡はケータイで来るんですけど、と告げても刑事に無視されて、時間が短すぎて逆探知できない、というセリフをなぜか聞かされた挙句、サイレン鳴らしたパトカー数十台が現場を「密かに」包囲して、犯人は逃走、交渉はご破算、くやしがる刑事。ぶちこわしだ。

ケーサツには言わないほうがよさそうだ、とカイエは思った。



「あーしまった。今日はベルギーから客が来る。でかい契約だから俺が相手しないわけにはいかん。こいつらを会社に置いとくのもマズイ。お前ら4人でカタつけてくれ。特別ボーナス支給するから」

拉致グループ3人とヒキタはクルマ2台に分乗し、カホとリンコをカホが住むマンションに連れて行くことになった。社長がカホに与えた高級マンションには、地下駐車場からカホの部屋に直通で行ける専用エレベーターがある。

「人質を運び込むにはもってこいだ。ヒキタは部屋に残って女たちを見張れ。カホはクスリで痴呆状態だからヒキタひとりで充分だろう。残る三人は朝と同様にコアダンプホテルに行ってキャベツ女を拉致してマンションに戻れ。契約が済んだら俺も合流する」
「また拉致ですかあ」「ボーナスやるって言ってるだろ。俺はベルギー人にケガの理由をなんて説明するか考えなきゃいけないんだ。とっととこいつらを運べ」「ケータイ返してよ」「そーだ、これは連絡用にお前らが持ってろ」「あたしに返してよ」「お前には手錠をやる」

リンコが手錠をかけられている頃、カイエは外国人観光客に道を尋ねられて困っていた。


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