「トーコ先生、それで彼どーだった」「あーヒカブーね。あたしにはコドモすぎるかなー」「誰も先生にどう、なんて聞いてないでしょ。そもそもヒカブーってダサ」「スカートの中サービスしたらあわてふためいてたわよ」「げ。なにそれ」「男の子がストッキングにどう反応するか知りたくって目の前で履いて見せただけ」「ヤだなあ、それ。フケツだわ、あたしのヒカワくんにーって泣くコがいるよ、きっと。あたしも泣くー。なんかニュースで先生を見る日が近い気がする。タドコロトーコ２７歳未成年インコーの疑いで書類送検、とか」「うわ、まだ２５よ。傷ついた」「いつまでサバ読んでんの」「まりえちゃん、女は２５から年を取らないのよ。特に美人は。そもそもあたしは若く見えるし」「やってることが幼い、ってだけでしょ」

「あーあ、教師の免許証勝手に見るような生徒がいるガッコに就職なんてするもんじゃないわね」「トーコ先生みたいなひとがセンセになれたってだけでも奇跡なのに、教師就職難の時代になんてゼータクなことを」「教師として恋の相談に乗ってあげてるじゃない。女は恩知らずだからキライよ」

「ヒカワくんってなんか冷たいんだよねー」「男の子はなんかの弾みでコトン、と転ぶから。ま、気長にチェイスすればいーんじゃない？」「他人事かい」「あたしは自分の恋で手一杯なんだって」

「あーもうこんな時間だ。行かなきゃ」「じゃーね。まりえちゃん、避妊はしっかりね。キミを守れるのはキミだけだよ。男まかせにしちゃあいけないぜ」「まだそんな段階じゃないし。それに正しい知識もセンセが言うとなんかヤらしいよね」「いろっぺーオトナの女への嫉妬かあ。ヒザのバンソーコーが絶えないうちは、まりえちゃんにロマーンスは訪れないだろなあ」「ヤな女だなあ。じゃトーコ先生また来るね」

保健室でひとりになるとタドコロ先生は急に表情を固くした。昨日の晩から不正出血が続いている。まさか深刻な病気じゃないだろうな。明日病院に行こうかな。でも医者に何を言われるかが怖い。今までこんなことは無かったのに。どうしたんだろう。

ま、じきに止まるさ、じきに。昨日の帰りにすれ違った髪の長い女、もう顔は忘れちゃったけどきれいだったな。なんですれ違うときに、あたしのオナカを触ったんだろう。あたしの異変を予知して教えてくれたのかな。霊感がありそうな雰囲気だった。あのあと出血が始まったんだ。教えてくれたんなら治してくれてもいいのに。ああ、考えることまで不健康になってるよ、あたし。やっぱり明日病院に行こう。