対象2 作:まりえしーる 発表日: 2005/08/05 13:30

「社長、今戻りました。これ、虚脱飯店からです」。カゲミは札束を社長に渡す。

「ごくろうだったな。ところでカゲミ、ガッコはどうだ。トモダチはできたか」「はい。楽しくやってます」「はあ。そのセリフか。また誰か刺したのか」「とんでもありません。まだ誰も」「まだ、って、これから刺したい相手がいるんだ」「いません。うまくやってます。トラブルは起こしてません」「トモダチつくれ」「います」「ウソは聞きたくない」「ホントです。今日もいっしょに食事してきました」「ホントか」「社長にウソは言いません」「男か」「え」「そーか。赤飯炊こうか」「やめてください。そんなんじゃないし、なんかスジが違ってるし」

「で、どんなヤツだ」「ただの友達です」「お前は腕は確かだが、ホントにウソつけないやつだな。全部顔に出ちまう。お前が男に生まれてればなあ。生きるの楽だったろうに」「あたしは女です」「うん。お前はかわいい。俺はお前に高校生らしい青春を送ってほしいんだ、少女マンガみたいな」

「あ、そーいえば。キャロットみきのことで」「キャロットみき先生と呼べ」「…。今日食事した同級生がキャロットみき先生の知り合いだって言ってました」「なんだと」

カゲミは深く後悔した。社長がまさかそれほど入れ込んでいようとは。色紙とコミックス両方にサインをもらってこい、なんて命令を与えられるなんて事態になるとは。

「かんべんしてください。そいつはできねえ相談です」「なんだと。俺の命令がきけねえっていうのか」「なんでもやります。でも、サインを頼むってのは、しかも少女マンガ家の」「ショージョマンガをサベツするのか、お前は」「いや、そーじゃなくて。借りを作りたくないんです」「トモダチなんだろ?そんなことも頼めないのはトモダチでもなんでもねーだろが。ウソついたのか、お前は。お仕置きだ。久しぶりにフロに」「もらってきます」

カゲミは深夜に太いマジックを持ってネットカフェに行った。イメージ検索でキャロットみきのサインを探すが見つかりそうも無い。マネして自分で書くつもりだったのに。まいったな。テキトーに捏造しとくか。だってリーダーにサイン頼んだりしたら、あたしのイメージが。ぎゃあ。


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