島の娘 作:まりえしーる 発表日: 2005/07/13(Wed) 10:30


「ドーブツってストライプが入るとシマなんとかっていうでしょ」「うん」
「シマウマとかシマリスとかシマフクロウとか」「シマフクロウってのは北海道にいる絶滅危惧種だね。日本最大のフクロウ」
「なんかアズサさんって北海道ネタくわしいよね」「シマブクロ、イワシタシマ、イワイシマコ」
「タカシマユウコのコスチュームはストライプだったかな。飽きてきた?」「シマハイエナ、ツシマヤマネコ」
「ツシマはまずいでしょ」「なんで」
「ストライプのシマじゃないから」「北海道のシマエナガのシマだって島のことだよ」 「日本語の名前ってまぎらわしいな」「シマアオジのシマも島」
「それも北海道?」「うん」
「北海道って島なのかな。すげーでっかいのに」「日本自体が島。日本列島っていうでしょ」
「そーいやそーだ」「日本は火山島なんだよ。外から見れば」
「え。じゃあ俺たちって島民のみなさんだ」「盆踊りおどってタイコを叩く」
「俺たちはエキゾチックなんだね。アズサさんは島の娘だ」「絶壁に立って海に沈む夕日を見つめる嵐の孤児」
「遺跡調査のために島を訪れた若き研究者が彼女にひとめぼれ」「しかし島のオキテがふたりの邪魔をするのであった」
「邪魔されると燃えちゃうってのは人生の落とし穴かな」「邪魔されないような恋は恋じゃないってことかも」
「若き研究者はなぜか島の娘というフレーズで燃えてきてしまいました」「あ、ホントだ。じゃあオキテを破ってあげる。よいしょ。ところでなんでシマのハナシになったの」
「忘れた」

ホントは今日の昼間、下着売り場に俺を無理やり付き合わせた102号室のひとのことを思い出してたんだ。ストライプのスーツが全然似合ってなかったな。それになんかドーブツっぽかったな、あのひと。一度目標を定めたら何週間も追跡してあきらめない捕食動物みたい。

「なに考えているのかな。全部忘れさせてあげる」

俺は全部忘れた。


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