雨女 作:まりえしーる 発表日: 2005/05/11(Wed) 08:41


ガッコに行く途中にある駐車場に同じクラスのまりえがしゃがみこんでいた。「なにしてんだ、お前」「あ、ヒカワくん、花見てんだ。かわいいんだよ、これ。なんて花なんだろ」。アスファルトの隙間から雑草が生えて花を咲かせている。この街で一人暮らしを始めてから2回目の春が来たんだ。「こっちはタチイヌノフグリでこいつがカラスノエンドウ」「へえ、ヒカワくん詳しいんだ、意外」「植物はガキの頃から好きでさ」「図鑑とか持ってるの」「ん。何冊か実家から持ってきてるけど」「明日ヒカワくんちに見せてもらいに行ってもいいかな」「なんで。図書館行けばいっぱいすげーのがあるよ」「マニアのヒカワくんが選んだ図鑑が見たいんだよ」「マニアじゃねーし、部屋きたねーから来るなよ」「片付けてあげるって。お礼に。あ、それからさ、なんか食べたいものとかある?」

ピンポーン。まりえが本当に来やがった。昼過ぎまで寝てたかったのに。玄関を開けるとビニール袋を下げたずぶ濡れのまりえが立っていた。「雨?降られたのか?」「うん。ついてないや」。部屋に上げてタオルを渡す。寒い、と言うんでシャワーに押し込んだ。とりあえずTシャツとジャージ着させればいいか。下着はどーすりゃいいんだ。俺のパンツ履かせるのはうまくなさそうだ。めんどくせーな。自分で選ばせりゃいいか。勝手にやれ。とか考えているうちに俺はベッドで眠ってしまった。

目が覚めたら食事ができていた。「おす。試食ののち感想を述べてくれたまえ」「おめーどっかヘンだ」。まりえは俺のパーカーとジャージを着ていた。食事は味が無いものと味が濃すぎるものとナマのものと焦げたものだった。「やっぱダメか」「うん」「アイソとかオセジとかネギライとかは」「お前ノーパン?」「ハナシそらすな。ヒカワくん、目を見て話してくれー」

雨は上がっていたが服が乾かないので近所のコインランドリーに連れて行った。最初は地図を渡して一人で行かせようとしたが、つきあってくれと言う。ノーパンの女子がひとりで外出するのはキケン過ぎるんだそうだ。男の部屋にノーパンでいることはキケンではないのか。バカか、こいつは。コインを入れて部屋に戻ろうとすると終わるまで待たなきゃダメと言う。かわいい下着だから絶対盗まれるんだそうだ。女ってめんどくさい。その時激しい雷雨が降り始めた。「ほら、どうせ待たなきゃいけないんだし」

俺は乾燥機の中で回転するブラとパンツを見ていた。男は下着の上下セットなんてことにわずらわされなくてラッキーだ。まりえは置いてあった古い雑誌を読んでる。「なに読んでんの」「まるごし刑事」「あっそ。雨やんだぞ」。ビニール袋に服を入れて外に出た。道のりの半分ぐらいで再び激しい雨にあう。走って帰ったが二人とも下着までびっしょりになっていた。なんて天気だ。「お前、雨女だろ」「ちがう」「ぜってーそうだ。俺まで巻き込みやがって」「ちがうって」

まりえはパーカーを脱いだ。Tシャツが濡れて肌に貼りつきノーブラだったことがわかった。「脱げよ」「え」「こっちのに着替えな、ほら」「なんだキンチョーして損した」「なんだそれ」。俺たちは着替えた。

「ヒカワくんって女嫌い?」「はぁ?」「ん、なんかさぁ、あんまり興味無さそうだよね、相手があたしだからかもしんないけど」「なに言ってんの」「高校生くらいの男の子って、もっと女のカラダに関心をいだくものじゃないんでしょうかねぇフツー。え?な、なに…ヒカワくん、なんか見えるよ、なに…」

白く透き通った何かが俺にまとわりついていた。まりえにも見えるのか。何かは俺の耳を舐め胸をさすり股間を太腿に押し付けていた。同級生に見られたくないが、俺は何かの乳房を揉まずにはいられない。この世のものとは思えない心地よい感触で自分を止めることができない。「ヒカワくん、なに!なんなの!」

「この部屋に越して来たときからいるんだ…。うっ、前の住人だったらしいよ、彼女は」「彼女って、彼女ってなんなのよ、それ!」。何かは俺のパンツのジッパーを下げ始めた。「だめ!ヒカワくん離れて!それから離れなさい!」。突然窓ガラスが砕け散り破片のひとつが、まりえの頬をかすめ小さな傷を作った。強い風雨が部屋に吹き込んできた。というより、まりえだけに風と雨が叩きつけている。俺のモノを引っ張り出した何かは「ふふふ、本当に雨女ね」と木枯しのような声で言ってから俺のモノを口に含んだ。「ばけもの!あたしに雨降らせたのもあんたなの!」。脳天までしびれるような快感で俺は目を閉じ大きく息を吐いた。「狂ってる!絶対狂ってる!」まりえはそう叫びながらも俺たちの行為を凝視していた。何かは俺にまたがり接合した。そして長い髪に隠れていた顔を初めてまりえに向けた。「う、うあああ」と叫んで、まりえは走って部屋から出て行った。その間俺は何度も何度も果てていた。

まりえ、これが毎晩のことなんだよ。もうおなかいっぱいなんですよ。キミのことはけっこう好きだけどさ。セックスは休みたいんだ。ああ、ホントに女ってめんどくさい。


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