「木のこころ・弦のきもち」設定 作:まりえしーる 発表日: 2005/03/18(Fri) 12:28

主人公・百田畑影未(ひゃくでんぱた かげみ)はエレキ・ギター&エレキ・ベース専門のカスタム楽器工房「なべさんズ」に勤務する楽器ビルダー。材の特性を活かした楽器づくりに没頭するあまり世間と隔絶し、ヌーブラという下着すら知らない職人系女。音響工学研究所も真っ青の聴覚を持ち、風呂にも入らずナノ単位で木を削り最高の鳴りを追及する姿勢から、業界では「ザ・サンドペーパー」と呼ばれる変人。天は二物を与えなかったらしく嗅覚と味覚がブチ壊れていて、ろくでもない物を平気で食べ周囲を引かせる。年に一度は自分で作った料理で食中毒を起こし病院送りに。マイケル・ブーブレの熱狂的ファンだということを秘密にしているが、工房のBGMでブーブレが流れると顔が真っ赤に。

影未は年々良質な材の入手が困難になってきていることに悩んでいる。ここ数年はアフリカ産のブビンカを多用しているが、いつまでこの材が使えるのだろう。そんなある日、影未のもとに訃報が届く。伝説の宮大工だった祖父・百田畑木目削(ひゃくでんぱた きめさく)の死。家出同然で故郷を捨てた影未だが、ただ一人自分を可愛がってくれたおじいちゃんのために生地・斑鳩に帰郷することに。

影未は葬儀で大宅助六と名乗る博士と出会う。助六博士は、地球上のすべての匠のワザをデジタル保存する「エキスパート・イタコ・システム」なる奇怪なモノを発明したマッド・サイエンティスト。伝説の宮大工重篤との情報をキャッチし、死の1週間前から影未の実家にずけずけとあがりこんで作業していた。脳内神経経路スキャンとインタビューで、木目削の全人格を「エキスパート・イタコ・システム」に取り込み済みだという。

CDのメカメカした表面を眺めるだけで音楽がわかる、みたいなこと言ってる、うそくせえ、と影未は思った。

「ヴァーチャルおじいちゃんにすぐ会えるんだけど、影未ちゃん、モニターになってくれないかな?木目削さんもキミに会いたがってたよ」

実は影未は祖父に相談したいことがたくさんあった。材のこと、加工のこと、接合のこと、自分の本当の両親のこと、手作りのオムレツを食べさせた恋人が病院に行ったきり帰ってこない理由、むかしの職人はノコを使わず材の目を読み見事に割ってたってほんと?おじいちゃん…。

影未はモニターになることを受け入れ、裏庭に設置されたテントの中へ。そこでは昭和SF映画に出てくるようなメカがハム音を上げて待っていた。

いっぽう24時間金儲けのことを考えている「経済界のホオジロザメ」ロジャー・Tは、匠のワザ独占で全世界から特許使用料をおいしくいただく目論見から、助六博士の研究を追跡している。ロジャー・Tは業界で「諜報の娘」と呼ばれ恐れられている三姉妹を助六博士のもとに送り込んでいた。さなぎ・むじな・かすよの三姉妹は、葬儀社のスタッフとして百田畑家に潜入している。キャラ設定はいつもどおり。

法隆寺の構造をプログラミング言語LISPで記述する、という常人には理解不能な目的を持つ特殊思想集団「マイクロ・バーリー」の指導者「黒いデーヤモンド」。非破壊検査による法隆寺解析に限界を感じはじめていた彼は、助六博士の「エキスパート・イタコ・システム」との提携を考えていた。しかし組織内の原理主義グループは彼の路線変更を「裏切り行為」と感じ、彼の追放と「エキスパート・イタコ・システム」の破壊を計画している。

そんな嵐の中心にいることも知らずヘッドセットとヌーブラ型の心電モニターを装着させられた影未。彼女の前の20インチ液晶ディスプレイに、今、祖父木目削が現れた…。


前へ 目次 次へ
inserted by FC2 system