「こわれものの迷宮〜ふらじゃいるでらびりんす」設定 作:まりえしーる 発表日: 2005/03/17(Thu) 12:22

主人公・百田畑影未(ひゃくでんぱた かげみ)は国破山河在大学(コパ・サンガーリだいがく)文学部人文社会学科で日本史を学ぶ学生。後醍醐天皇の皇子・大塔宮護良親王を熱狂的に敬愛し、彼の研究に命を捧げる文系女。部屋には自分で描いた大塔宮護良親王の肖像画を飾っている。ただし想像による肖像しかも羽海野チカふうの絵柄。学究の徒としての影未は、資料収集と分類・分析に異常なまでの才能を持ち、研究者たちから「ザ・ソース」と呼ばれる変人。資料に浸っているだけでハッピー&学問的野心ゼロのため「便利な助手」として教員たちからいいように使われる日々を送っている。

ある日影未は現代日本産業史の大宅助六教授の研究室に呼ばれる。助六教授は、こずかい稼ぎのためにビジネスマン向けのトリビア本やライト企業戦士ノベルを執筆し始めたところ、これが売れてTVのコメンテーターとして出演依頼が来るようになり派手な生活を覚え、すっかり本来の研究に興味を失ってしまったダメ研究者である。

「こないだ『2時のおたく』でエガワ・ショーコさんと並んでデパ地下の最新スイーツいろいろ食べたよ〜。エガワちゃんって実物はすっごい美人なんでハァハァしちゃったな。ところで影未くん、今度ボク『知って企業?こ〜んな歴史でワタクシひとやま当てました』って本書かなきゃいけないんだ。編集者が有名企業の社史をいっぱい送って来たんだけど読む時間なくってさ。資料整理のバイトしない?次のワイドショーで江川達也さんに大塔宮護良親王の絵を色紙に描いてくれって頼んどくからさぁ」

「やります(どきどき)」

てな展開で東証一部上場企業200社の社史なるものを一夜にして読み終えた影未は、おおいなる違和感を覚えていた。「とーさんが話していたのと違う」。

実は影未の父・百田畑ギムレット夫と祖父・百田畑ナベ郎は高度成長時代から現代にいたる日本の裏経済を知り尽くした、二代にわたる産業スパイ親子であった。スパイ or カウンター・スパイとして極度の緊張を強いられる生活を送る彼らは、その反動で家で酒を飲むと重大機密事項をべらべらなんでもかんでも子供の影未の前でしゃべっていた。すでに大塔村ホームページの閲覧などに夢中になっていた影未は、ダメスパイたちのグチまじりのたわごとに耳を貸さない冷酷さを身に付けてはいたが、そうして聞いて育った話はどこか記憶に残っている。

影未は突然「誰かが日本経済発展に貢献した産業スパイたちの記録を残さなければいけない」と考え、読み終えた社史すべての書き直しを決意する。「とーさんたちの活躍を歴史に刻むことが、あたしに出来るただひとつの親孝行だわ」という奇妙な動機に導かれた影未は、手始めに大手家電メーカー「ホームラン・ブラザーズ」の産業スパイ史資料収集を開始するのであった。

この資料収集の天才「ザ・ソース」の突飛な行動は、あっけなくホームラン・ブラザーズ・リスク管理課の知るところとなり、敏腕課長の三千石琴綾(さんぜんごく ことあや)は「爆弾処理班」と呼ばれる問題抹殺要員たちに特命をくだす。

爆弾処理班のメンバーは、リスク管理課内で「沈黙の娘」と恐れられる三姉妹さなぎ・むじな・かすよ。キャラ設定はいつも同じなので省略。

いっぽう、引退した産業スパイたちの老後の生活を支援する「さんすぱ互助会」の若き発起人「黒いデーヤモンド」は影未の行動に共感を覚え、互助会に加入している現役産業スパイやOBたちに影未をサポートすることを指示。

「対プチテロ企業コンサルティング会社ハイキンズ」を率い、うさんくさい商売であぶく銭を稼ぎまくる財界のごろつきロジャー・Tは、影未の書き上げるウラ社史は恐喝のネタとして最強の武器になると考え、影未の活動を見えないところから援助する。ウラ社史完成時にそれを奪い、影未をなきものにするつもり。

そしてついに影未は「ホームラン・ブラザーズ」が業界トップに立つ原動力となった「高級ヒノキ使用家具調カラーテレビ」の開発秘話を知る元産業スパイの居所をつきとめるのであった…。


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