ア・バード・オン・ザ・ホライゾン。「地平線の鳥」ってなんのことなんだろう。だいたい地平線ってもの自体見たことがない。モンタナとか北海道に行けば見られるのかな。でも地平線のような遠いところに鳥がいたって肉眼じゃ見えない気がする。

金属加工の作業中に俺はそんなことを考えていた。外に出たい。家に帰りたい。街が恋しい。窓の外では出所が近い連中が庭の清掃をしている。その上を一羽の鳥が飛ぶ。

鳥は優良受刑者たちの頭上を越し、高い塀の上にとまった。

そうか、地平線ってのはあの塀のことか。俺の世界の果ては目の前にあったんだ。俺の地平線の鳥は肉眼ではっきり見える。

俺はまたひとつ文学がわかった気がした。そして、そのことに意味があってほしいと願った。